こんな本はどうですか?

 「どんな本を読ませたらいいですか。」
 この相談は毎年多くのご父母からいただきます。現地校在籍で日常日本語に触れる時間が少ない、子ども自ら本を手にすることが少ない、または国語の文章題が大の苦手など、理由は様々です。そうはいっても、教養のたしなみとして近代純文学などを読ませたいわけではなく、活字離れが加速する昨今、何とか子どもを文字に繋ぎ止めたいという切実な望みがあるのでしょう。しかし、星の数ほどある本の中で何を手に取るべきかという段になると簡単な話ではなく、選ぶ基準のようなものが欲しいということになるわけです。
 入試に出題される作品は読み手(=受験者)の年齢が予め想定されていますから、子どもにふさわしい内容という基準をクリアし、年齢不相応の難解さもありません。また、出題者も受験生の文字離れは認識しているので、明治~昭和の近代文学や昭和に人気を博した評論家の作品は主流を外れ、中・高・大を問わず入試に出題される作家(筆者)は「世代交代」が起こっています。上の表は日能研が集計した出題人気作家ランキングです。

 小説分野ダントツ1位の重松清は、小学4年生以上なら読めるでしょう。「エイジ」、「きよしこ」は1冊もので長いですが、読みやすい短編集もあります。「小学五年生」という短編集の主人公は題名どおり小学5年生で、その中の「雨やどり」という短編は学習院中等科で今年出題されました。予習シリーズが採用した「さかあがりの神様」や「卒業ホームラン」は、「卒業ホームラン」収録の短編です。また、今年7月に出版された「青い鳥」にも心を動かす短編が散りばめられています。表中の作家で入試に出題された他の小説作品を以下に紹介しましょう。
  あさの あつこ 「THE MANZAI」
  伊集院 静  「ぼくのボールがきみに届けば」
  阿部 夏丸  「カワウソがいる」
  森 絵都    「子供は眠る」 
 さて、上述の他に米国滞在子女にお勧めしたい作家の一人が、日系三世の女流作家シンシア・カドハタ(Cynthia Kadohata)です。「きらきら(原題kira-kira)」で青少年対象小説に与えられるThe Newbery Medalを受賞し、一躍有名になりました。在米日系人の視点から異文化、差別、家族の絆などを捉えており、特に日本国外で生活する子どもたちに考えてほしいテーマがこの作品にはあります。原著は平易な英語で書かれていますし、邦訳も出版されていますから、ぜひ読ませてみてください。また、近著の「草花とよばれた少女(原題Weedflower)」は戦争(真珠湾攻撃)を背景にした日系家族の物語で、今年立教女学院中学で出題されました。
(評論文については次月号で紹介する予定です。)

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